妊娠がわかると、出産まで働くことは難しくなります。
会社に休職願いを提出し、産休や育休を取ることになりますが、このような休職中、給与を支払ってくれる企業はほとんどありません。
会社は休むことはできるものの、給与はまったく出ないという方も多くいます。収入は社会保険から出る給付だけの方も少なくありません。
産休や育休期間が長いと、まったく収入がない状態が続くことになりますから、「税金だけでも、せめて減らせないかな?」とつい考えてしまいますよね。
産休や育休の間だけでも夫の扶養に入ることができれば、所得税や住民税も助かることになります。
そこで今回は、
・扶養に入ると何が得なの?
・産休中や育休中に旦那さんの扶養に入れる?
・扶養に入るにはどうすればいい?
といった方に、産休、育休中の扶養問題について詳しくご紹介します。
旦那さんの扶養に入ると何が得なの?
「結婚以来、お互い会社勤めだから、今まで旦那さんの扶養に入ったことは一度もない。」というワークウーマンも多いことでしょう。
働いていて一定以上の収入があると、もちろん旦那さんの扶養になどなることができないため、扶養についての知識があまりない方もいます。
そもそも扶養に入ることと、入らないことは何がどう違うのでしょうか?
2018年以降、扶養の観点も見直しが実施され、以前とは仕組みが大きく異なってきています。損得を中心に簡単に説明していくことにしましょう。
税金がお得
旦那さんの扶養になった場合、色々なメリットがあります。その一つが税金です。旦那さんの住民税や所得税額を安く抑えることができます。
その理由は、配偶者控除を受けることができるからです。配偶者控除とは、扶養者がたくさんいる家庭と、まったくいない家庭では、例え収入が同じでも税金を納める時には負担が異なります。
同じ額の税金を取ってしまっては、扶養の多い家庭の方が負担も増えることになりますよ。その格差を埋めようという配慮から設置されたのが配偶者控除です。
今までも配偶者控除は機能していましたが、2018年1月から新しい制度に切り替わることになりました。
妻の収入が今までは103万円以下までが上限でしたが、150万円以下の年収であれば、年間38万円の控除を受けることができるようになりました。
また、配偶者控除の他に配偶者特別控除枠が設けられ、配偶者の収入が201万円まで控除が受けられるよう上限が引き上げられています。
休業中はまったく収入がなくなりますので、夫の税金が少しでも減額されれば、助かります。ただし、2018年以降の控除に関しては夫の収入によって変動するとされています。
夫の収入によっては控除があまり受けられない場合や、まったく受けることができない場合もあるので、必ずしもすべての方が受けられる訳ではありませんが、チェックしてみる価値はあります。
保険料が得になる
夫の扶養に入っている場合、妻は一切社会保険料を支払う必要がありません。
ところが扶養が適用されない場合、健康保険はもちろんのこと、厚生年金なども妻の負担となります。
妻の年収が130万円で社会保険、厚生年金に加入する場合、年間約18万円以上の差額が生じることになりますので、扶養に入ることができるかどうかは損得につながることなのです。
厚生年金や健康保険に関しては、これまで通りのルールが適用されます。
産休や育休の場合、共働きでは社会保険料での扶養は無理
扶養に入ることでいくら税金や保険料がお得になるからといって、産休、育休にこれが該当するわけではありません。
共働きの場合、会社を辞めた訳ではありませんので、保険料はたとえ産休、育休であっても支払う必要があります。
もちろん収入によって保険料は異なりますので、安くなるケースが多くなりますが、支払い続けることで、出産手当などを受け取ることができるのです。
産休や育休として扶養に入る場合、まずこの社会保険については、扶養は無理と考えましょう。扶養に入ると考えるのであれば、税金のメリットを得る目的で入ることになります。
産休や育休を取る場合扶養に入ることができる?
社会保険料の減額は無理であっても、税金が断然お得になる扶養ですから、やはり産休や育休の間入ることができるのであれば、活用したいと誰もが思うことです。
収入がまったくなくなることになりますので、この差額は大切です。実際のところ産休中、育休中に本当に夫の扶養に入ることはできるのでしょうか?
結論からいうと、妻が妊娠して、休職を取り、妻の収入がなくなってしまう場合、旦那さんの扶養に入ることができます。
多くはありませんが、産休、育休中、会社によっては収入があることもあるので、注意が必要となります。
また、有休扱いになっている場合も、当然収入が発生してきますので、扶養に入ることはできません。
扶養に入ることができるか否かは、産休、育休の年の収入に着目しましょう。
産休中に社会保険から支給される「出産手当」、育休中に雇用保険から受け取ることのできる「育児休業給付金」は非課税となっていますので、カウントする必要はありませんが、その年に働いていた年収をもとに考えてみましょう。
妻の年収が150万円以下なら「配偶者控除」が、201万円以下なら「配偶者特別控除」を旦那さんが受けることができますので、扶養になることができます。
所得税と住民税が減額される
住民税は、その年の1月1日から12月31日までの収入などをもとに算出されます。
そのため、旦那さんの扶養になった場合、控除を受けることができますので、所得税も減り、住民税の額も減ることになります。
所得税と住民税両方の税額が減額されることになりますので、扶養扱いを受けないのはあまりにも損といえます。
まずは年末調整で確認しましょう!
扶養に入って、節税のメリットを受けたい場合には、妻側の年末調整を確認するのが大切です。
年末調整で「給与所得の源泉徴収票」を受け取ったら、まずは一番左の支払金額欄を確認してみましょう。もしその金額が130万円以下であれば、配偶者控除を、201万円以下であれば配偶者特別控除を受けることができます。
それ以前に確認したい場合には、給与明細で確かめるのが一番です。例えばその年の1月から3月まで働いたのであれば、その3か月分の給与と賞与を足してみましょう。
合計金額がこの条件を満たしているか確認してみましょう。この時非課税となる通勤のための定期代や通勤手当は除外してかまいません。
所得税控除を受ける場合、非課税の部分は含めて計算する必要はありません。また、支給を受けた出産手当や育児休業給付金などがある場合にも、それを含めず考えてください。
申請の方法は?
減税のメリットを受けるためには、「難しい手続きが必要になってくるの?」と思っている方も多いですが、それほど面倒な手続きは必要ありません。
年末調整、確定申告の際に申し出ることで、配偶者控除を受けることができます。
年末調整
旦那さんの勤め先に申し出ることで、配偶者控除を受けることができます。
会社で申し出を行ったら、その会社ごとに給与所得者の扶養控除等の提出をするよう指示がありますので、その指示に従うようにしましょう。
必要事項を記入して提出すれば申告完了です。その年の旦那さんの、源泉徴収票の配偶者特別控除の額の欄に、金額の記載があるか必ず確認しましょう。
金額の記載があれば、間違いなく控除申請がされていることになります。記載がない場合には配偶者控除が行われていませんので、再度確認をしてみましょう。
確定申告
年末調整で配偶者控除の申告ができなかった場合でも、確定申告をすることで、配偶者控除、配偶者特別控除を受けることが可能になります。
国税庁のHPにある確定申告書制作コーナーから、パソコンで申告書を制作したり、ダウンロードできます。
記載方法なども解説していますので、そちらを参考に申告を行ってみましょう。確定申告は提出期限が設けられています。
毎年3月15日までに提出することが義務付けられていますので、それに合わせて申告できるよう準備しておきましょう。
確定申告は5年さかのぼって申告することが可能
サラリーマンなどの場合、本来確定申告をする必要がありません。
税金を取り戻す場合の還付申告となります。会社などに申し出ることを忘れてしまい、配偶者控除の漏れがあった場合には、5年間をさかのぼって届け出ができます。
配偶者控除漏れのあった翌年の1月1日から5年間がその期間となります。
3月15日と言う確定申告の期限がありますが、その期間に行うと決められてもいません。いつでも好きな時に申告書を提出できます。
通常の確定申告書(様式A)に記入して提出すればOKです。上の子の時の申告ができていない場合など、5年ほどさかのぼることができますので、配偶者控除分をしっかり受け取ってください。
すでに確定申告をしている場合はさかのぼれる?
すでに確定申告を行っている場合には、払い過ぎた税金を還付してもらう必要がありますので、更正の請求が必要となります。
更正の請求は、その確定申告の期限によって違ってきます。
確定申告の期限前に更正の請求を行った場合には5年さかのぼることができますが、すでに期限を過ぎている場合、1年しかさかのぼることができませんので、慎重に行うことが大切です。
確定申告の期限前に、きちんと配偶者控除の申告ができるよう、漏れなく記入するよう気を付けましょう。
所得税が0円の場合も申告を
住宅ローン控除を受けている場合、住宅ローンの年末残高の1%が、その年の所得税より高い場合、所得税額は0円になることがありますが、その場合にも配偶者控除の申告はした方が良いといえます。
なぜなら、配偶者控除の申告をすることで、次の住民税にあたる月の給与の減額が減るためです。
つまり住民税が次回分安くなります。
所得税が0円だともう申告しても無駄なのではと考えてしまう方も多いですが、そんなことはありませんので、ぜひ配偶者控除、配偶者特別控除の申告をしてください。
退職しても扶養になれないケース
ここまでは、休職した際の扶養についてをお話ししてきましたが、退職した場合、必ず扶養に入ることができると思っているなら要注意です。
退職すると当然収入もなくなりますので、その年の収入が扶養の条件を満たしている場合、旦那さんの扶養に入り、旦那さん側の健康保険や配偶者控除が受けられると勘違いしている方も多くいますが、必ずしも扶養に入ることができるわけではありません。
出産手当や育児休業給付金は非課税の扱いになるため、失業給付金も同様に非課税なので、社会保険加入もOKと考えている方が多くいます。
しかし、所得税、住民税では非課税となり、国民健康保険では所得額としてカウントされませんが、社会保険に関しては失業保険も収入としてみなされます。
そのため、社会保険に扶養としてはいることができなくなってしまいます。
失業保険の日額が3612円以上ある場合には、月額も108360円となり、年収の見込み額も130万円を超えることになりますので、社会保険には扶養とみなされません。
妻だけ国民健康保険に加入が必要となりますので、注意しましょう。ただし、配偶者控除に関しては受けることが可能となっていますので、必ず申告を行うようにしてください。
まとめ
妊娠して休職を考える場合、収入がなくなることがネックな方も多いことでしょう。
もちろん、大切な赤ちゃんを迎えるためには仕方のないことですが、今後子育てすることを考えると、お金は少しでも多く残しておきたいものです。
そんな時考えてほしいのが扶養に入ること。旦那さんの扶養に入ることで、税金が減額されることがありますので、必ずチェックしてみることが大切です。
妻の産休や育休の時期によっても異なりますが、収入などの条件を満たすことができれば、休職中であっても妻は旦那さんの扶養に入ることができます。
所得税や住民税が減額され、一般的に5万円から7万円ほども得することがあるのです。赤ちゃんのためにも、休業する際には必ず扶養を検討してみてくださいね。